何を基準に給与の額を決めればよいか

当方では給与制度の設計のお仕事をさせていただいているのですが、何を基準に給与を決めたらよいの?という質問をしばしばいただきます。
私の考えでは優先順位順に以下のとおりです。
1. 企業の給与原資
2. 社員の生計費
3. 社員のパフォーマンス
4. 同業他社の水準

 とにかくこれを守らないとマズいというのは、企業の給与原資です。何といっても給与は労働基準法でしっかり守られているので、ちょっと業績下がってきたから給与を下げます…ということが簡単にできません。なので、絶対に払える額を給与としては設定すべきです。もし業績が良くてもっと払える時には、賞与として支払えばいいのです。

 次に社員の生計費です。これを無視した給与設計をしてもまさに絵に描いた餅で、誰も会社に来てくれないし、今会社にいる人たちも生活できないとなるとさすがに辞めてしまいます。生計費は年齢、家族構成、勤務地によって変化します。生計費データについては国の調査データなどがあるのでそれを利用します。
 
 もしこの段階で、1と2を満たすことができない、イコール社員の生計費をまかなえるほどの給与原資がない、というのであれば、残念ながら欲しい人材を雇う力が企業にはないということになります。ここで無理をしても、たいていあまりうまくいかないので、まずはこの段階でよく考えるべきだと思います。

 1と2は絶対ですが、あと3と4については、1と2のプラスアルファとして考えていいと思います。
 
 3は支払った給与を最大限に活かすためにやるべきことです。何らかの人事考課制度を入れて、頑張って仕事をしたら報われるんだという動機付けのために導入します。

 4については、もちろん給与額は重要な要素ですが、それだけではなく仕事の内容、会社の雰囲気、成長性、労働時間その他いろんな条件を複合して考える必要があるので、一番最後の要素として入れています。中小企業でもしお金がなく良い給与が払えなくても、給与以外の魅力を高める努力をすることでカバーできる可能性があります。

 しかしながらご相談を受けるなかで、まったく今まで給与制度がなかった企業に多いご相談は、4から入るケースです。「同業他社がこれくらいだから、これくらい払う制度にしたら良いのでしょうか?」という感じです。そのような方にはまずは先に1から3について検討いただくよう、アドバイスしています。

 また次に多いのが、「やった分だけ、頑張った人にだけ払う」のが当然だという考えにより、3のパフォーマンスだけで給与額を決めようというご相談です。もちろんある一定以上の給与水準の企業であれば、社員の属人的な要素である生計費を考慮せず、パフォーマンスだけで給与が決まりますという制度を作ることができますが、そうではない給与水準の場合には、社員さんがついて来ない可能性があります。たとえ退職率が上がり、採用費用がかさんだとしても、一定以下のパフォーマンスの社員さんをふるい落としたい、という明確な覚悟がある場合だけ導入した方が良いと思います。